Public Art
Silver Wind New wind + New flow 絶え間なく新鮮な風が流れる、本物と新しさが出会う場所
TODA BUILDING心斎橋は、2019年秋より建物のエントランス外壁にパブリックアートを設置し、大阪の中心部に魅力ある都市景観の新スポットを生み出している。御堂筋に面したグラウンドフロアにはハイブランドの路面店が入り、「本物と新しさが出会う場所」をテーマとする洗練された建築デザインによって街の賑わいとオフィスビルの機能とが豊かに融合された。
エントランス外壁のパブリックアートには、佐藤忠の作品《Silver Wind 〜New wind + New flow〜》が同年4月にコンペで選出、9月末に設置された。本作はステンレスの光沢感と軽やかな曲線をランダムに組み合わせ、流れる風を表現した抽象彫刻である。遠くからでも目を惹きつけ、街ゆく人々が新しい何かを発見する「喜び」へと繋がる存在感に、ディペロッパーから大きな期待が寄せられた。
佐藤は作品の形状にとどまらず、空間との調和や時間の経過に対しても常に高い意識を持ち制作にアプローチする。風や光や水など、私たちを取り巻く環境、気配、動きあるものを鋭敏に捉え、精緻に設計へ落とし込んでいくのである。硬くて重い従来の金属のイメージとは異なり、自然を享受し空気が通り抜ける快適さ・透過性を感じさせるしなやかで凛とした佇まいに、その思考は明確にあらわれている。
今回のパブリックアート設置は、1987年竣工の旧りそな船場ビルが一部改修され、TODA BUILDING心斎橋へと生まれ変わるプロジェクトの一環として行われた。30年来のビルに新たな息吹が吹き込まれる舞台設定に、佐藤は「爽やかな風が流れるイメージが舞い降りた」という。そして過去から現在・未来へと受け継がれながらも、絶え間なく新鮮な風が流れ込み、ポジティブなエネルギーが生まれる場となるよう願いを込めて本作を制作した。
ステンレスのヘアラインと光沢それぞれの仕上げがシルバーの曲線とともにリズムをつくり、《Silver Wind》はさまざまな光を受けて多彩な輝きを放つ。さらに夜間には四方からのライティング演出によってシルエットは重層的に浮かび上がり、背景に敷きつめられた天然石との素材対比や、奥行きがわずかに異なる全10パーツの配置の妙とも相まって、本作は建物と一体で深遠な風景をつくりだすこととなった。
経済と文化芸術の多様な交流により新たな価値と対話が生み出され、さらにこの場が活性化していく未来に私たちは胸が高鳴る。
アートコートギャラリー
撮影: 多田雅輝
コーディネート 画像提供:アートコートギャラリー